ただの風邪。

音楽のことを中心にいろいろと書いています。

日記 2018年12月11日(Tierra Whackいいっすね、すみません……)

 星野源のアルバムにUjico*/Snail's Houseが参加するとか。星野源のFuture Bassへの入れ込みかたは「アイデアの間奏でそれっぽいことやった」だけにはとどまらない、ということはあの楽曲全体をつらぬくリズムや譜割りのつくりを分析して検証したことがあったし、新作のリード曲「POP VIRUS」にもEDM的なサウンドメイクのエッセンスを感じるとも指摘してきたけれど、ここにきてその読みはだいたいあたってたことがわかったね!

caughtacold.hatenablog.com

 今年書いたブログのなかでは一番いま書くべきことと書きたいことと書けたことが調和してたと自分では思っている。音楽ジャーナリズムの大半が「ロックはだめ、いまはヒップホップ」みたいに、なにかといやあ「トラップ以降」だなんだと言い募るなか、星野源はしれっとEDMに行くのがらしいというか、日本のドメスティックな音楽の遺産をどう活かしていくかということを考えてるよなあと思う。惜しむらくはそれをサブスクなどでグローバルな舞台に問うということができてないってことだろう。細野晴臣の仕事がいま海外で注目を集めるみたいに、また外国人が発見してくれるまで待つつもりなんだろうか。

 宇多田ヒカルSkrillexのコラボがなかなか秀逸で、「誓い」のリミックスから発展したコラボというのがよくわかる凝ったリズム。三連の裏に食い込んでいくような微妙にスウィングしたフロウから、フック(ビルドアップ)でストレートなフロウに移行するあたりの巧みさよ。ドロップでのヴォーカルチョップとモジュレーションは、よくこれにOK出したなという感じ。J-POPとEDMの相性の良さをここでも感じたりする。エモーショナルな展開と、リズムの工夫がダイレクトにビートと絡み合う感じとかね。

 Lidoの新しいEP『I O U 2』がめちゃ良くて、Future Bass系のちょいレイドバックしたR&B寄りのプロデューサー、みたいなイメージを覆す、ある種今年の先鋭的なエレクトロニック・ミュージックやR&Bのリリース(前者でいえばSOPHIEとか、後者で言えばMoses Sumneyとか)と並べてもぜんぜんいい意欲作やなあと思います。ビルドアップやヴァース部分の王道ポップスっぽさに対してドロップやフックがぐっと攻めていたり、ビートレスなアプローチを思い切ってとってたり、おもろいですよ。『I O U 1』もあわせてどうぞ↓

 Underworldの新EPも良い。四つ打ちのハードめなテクノにカール・ハイドのヴォーカルがのるストイックなサウンドながら、インダストリアルやIDM、テクノがリバイバルしてきている今に絶妙にフィットしている。ここ数年のUnderworldはなんだか肌に合わなくて敬遠してたんだけどこれはいい。

 韓国のボーイバンドDAY6の新曲は80's風のシンセポップ。しかし、こんなずっしりしたビートは80'sにはありえねえだろ、というくらい迫力があるサウンドで、しっかりとモダンにアップデートされている。

 Tierra Whackの『Whack World』を再聴、1曲1分という特異なフォーマットに注目しちゃうけれど、それぞれビートもバラエティに富んでいるし、扱われているトピックも面白い。愛について、男について、仲間について、ヒップホップというゲームについて……等々。優れたソングライティングのスキルがないとここまで思い切った構成でこんなテーマを描くことはできないだろうな、と思わせる。特に印象深かったのは「Dr.Seuss」の「君らみたいなのはセルアウトするけど、私はちょっとだけ売って、重要になる(You the type sell out / Me, I’m trying to sell a bit, relevant)」というライン。

 いわばこの曲は「ボースティングしまくるラッパーたちの欺瞞」を暴く系のやつなんだけど、と同時に、スキャンダルや不慮の死でゴシップ的にメディアを賑わせ、それによって名声を得てセルアウトしていくラッパーたちを横目に、「このゲーム、そんな勝ち方でいいの?」と問いかけているようにも思える。私は私のやり方で、シーンに欠かせない人物になって、新しい勝ち方を見つけてみせる、そんなアルバム。実際、「4wings」で彼女は「swagを見せてやるからパクってみれば(Here go some swag you can bite off)」と言うのだが、これは自信のあらわれであると同時に、自らが新たなロールモデルになってやろうという野心にも聞こえてくる。