ただの風邪。

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特筆すべきは和声やメロディよりサウンドの巧みな扱い:Anomalie『Metropole Part II』

 カナダはケベック州を拠点に活動するキーボーディスト/ビートメーカー、AnomalieのEP。著名な奨学金に勝ち抜いてクラシックの教育を受けた秀才であり、ジャズとエレクトロニック・ミュージックをまたにかける若き才能、といった感じの紹介をよくみかける。実際和声とかメロディはかなり洗練されていて、注目を浴びるのもわかるのだけれど、だからといって爆発的なインパクトがあるかというとそんな気もしない。むしろEDMやビーツもののときに毒々しくもあるポップさ(いっときのPC Musicが戯画化したようなタイプの)に二の足を踏むリスナーが好むようなニッチという印象を受ける。適度に今っぽく適度にオトナ、みたいな……。

 とはいえ、そうした若干退屈でもある楽理的な洗練とは別に、プロデューサーとしての力量をびしびしと感じるポイントがある。流麗なストリングスからフューチャーベース的なウェーブテーブル系シンセへとスムースにモジュレーションするサウンドメイクだ。そもそも生っぽいストリングス(とはいえソフト音源だと思うが)と派手なシンセが違和感なく一曲のなかに同居しているのは面白いし、ストリングスにフィルターがかかってまるでシンセのように聴こえたり、シンセが担っていた音域がなめらかにストリングスへと交代したりと、細かい技が光っている。これほどの馴染み具合が実現しているのは、おそらくサウンドそのものの扱いが巧みなだけではなく、そもそもクラシカルなアレンジの素養が加わっているせいもあろう。

 だからある意味で、リスナー視点で繰り返し熱狂して聴くというよりも、素晴らしい練度の教科書として、ビートメーカーがチェックしてみるといいのかも? と思う。こういうプロダクションのテクニックってどこで学ぶんすかね? やっぱりYouTubeチュートリアル参考にしたりするのかなあ。

Metropole Part II

Metropole Part II