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分水嶺としての「ドロップ」――Perfume『Future Pop』レビュー記事補遺

realsound.jp

 オリコン週間アルバムランキングで1位をとった、Perfumeの新作『Future Pop』について書きました。EDMとPerfumeの距離感の微妙さ、そして本作で迎えた堂々たる融合、という感じの内容です。ただ本文中で言及しきれないことがあったので若干補遺。

 まず、EDMにおけるビルドアップ‐ドロップ構成について。本文中でも書いたとおりEDMバブルも落ち着いたいまではドロップに対してどうアプローチするのかというのが多様化しています。第一に、これみよがしのビルドアップ‐ドロップ構成から距離をとった、ポストEDM的なスタンス。今年のFUJI ROCK FESTIVALでも来日を果たしたいま人気のデュオODESZAは、壮大なスケールのサウンドを展開しつつも構成はいわゆるEDMではないです。

 あと、「あのトップDJが脱EDM?!」と話題になったCalvin Harrisの『Funk Wav Bounces Vol. 1』も、ドロップのもたらすクライマックスから離れて、ファンクのグルーヴで適度にレイドバックさせつつじわじわ上げるアプローチという意味でわかりやすい例。

 他方、ドロップをいかに過激に先鋭化させるかというアプローチもあり、トラップとかダブステップとかあるいはハードスタイルといったブチ上げてなんぼのジャンルがそんな感じという印象です。そもそもトラップもダブステップもハードスタイルもEDM化する前はビルドアップ‐ドロップ構成とは特に関係なかったわけで、特にハードスタイルはこの構成を取り入れることでEDMの文脈に乗り、改めて流行しているという感じでしょうか。

 過激すぎてヤバいドロップの例はたくさんありますがこないだ出たCarnage「El Diablo」はもはやビルドアップとドロップ以外のパートが存在せず、ビートレスで始まって延々ビルドアップが続いた後に耳をつんざくようなドロップに入って、ひとしきり暴れたあとはまたビートレスになって再度ビルドアップ、以上を2セット、みたいなエクストリームさです。『Funk Wav~』がアンチクライマックスだとしたら、こっちはクライマックス以外存在してない。

 あと、Iimori Masayoshiさんのツイートで知ったYOOKiE「BASSQUAKE (feat. Jeff Kush)」は、ドロップでほぼサブベースしか鳴ってないので普通のスピーカーで聴いてもほぼ無音、ヘッドフォンで聴いても体感できるか微妙。うちのスピーカーはぎり鳴ったかな~ いや鳴ってない気がするな~ くらいのあれです。

 同じ系統でいうとHEKLER「Basic Bass Tune」もドロップはほとんどサブベース(歪んだ倍音がたくさん入ってるのでこっちは普通のスピーカーでもなにが起こってるかはわかる)。現場で聴きてぇ~。

 最後に変わり種中の変わり種。ゼロ年代に世界的に流行したファンキ・カリオカ(バイレ・ファンキ)が現在世界的に見ても最もクレイジーサウンドに謎進化を遂げていることはご存知の方はご存知のことと思いますが、そんななか、MC Hollywood「Tipo Rave Balança O Popo」はEDMのビルドアップ‐ドロップ構成を取り入れてパロディ。脈絡なく入ってくるビルドアップから、いつものすっかすかなファンキサウンドに突然戻るドロップは絶妙なユーモアを醸してます。

 といった例を挙げてみていくと、『Future Pop』はなんだかんだ言うて構成としてはEDMに寄りつつも、エキセントリックな音使いや過激なドロップは避けて、ポップスとしても成立するバランスをうまくとっているように思います。ある種の「中庸さ」を保つことで、EDMのダイナミズムとJ-POPの親しみやすさを両立させている、というふうに言えるかと。中田ヤスタカのソロを聴いても割と「中庸さ」は感じるので、そういうゲームには乗らないという意志があるんじゃないかな。どうだろう。