ただの風邪。

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Rita Ora "Girls"がクイア・アンセムたりえない微妙な理由

 Rita OraがCardi B、Bebe Rexha、Charli XCXをフィーチャーした新曲"Girls"をリリースした。"Sometimes I just wanna kiss girls, girls, girls"というフックからわかるとおり、女性同士の性愛を歌った楽曲だ。しかし、この曲に対しては、クイアな女性ミュージシャンから批判が投げかけられている。今年のCoachellaでCardi Bのステージに上ったことでも記憶に新しいKehlaniは、自身のTwitterアカウント上で、Rita Oraら参加ミュージシャンへの敬意を評しつつも、この曲の歌詞を「有害(harmful)」だと懸念を表明している。

 Hayley Kiyokoも、Twitter上で長文のコメントを発表しており、"Girls"の歌詞が具体的にどう問題であるかについても言及している。

 重要なので、肝心な部分を抄訳しよう。

けれど、時折まったく無神経なメッセージを携えた曲がいくらか現れたりする。そうした曲はLGBTQ+コミュニティにとって良い影響よりは悪影響を及ぼすのだ。
彼女たちがこの曲にこめた意図に対してではなくて、歌詞の裏側に見える配慮の浅さにひっかかるのだ。私は女の子とキスするのにワインを飲む必要なんかない。私は生まれてこの方ずっと女性を愛してきたんだから。こういう種類のメッセージは危険だ。というのは、それはあるコミュニティが持つとても純粋な気持ちを卑下し、無効化してしまうからだ。私は可能なときにはいつでも、そうした気持ちを守る責任があると感じている。

 つまり、"Girls"で歌われている女性同士の性愛は、酒の勢いとか、ちょっとした気持ちのゆらぎで起こる偶発的な出来事程度に矮小化されていて、LGBTQ+コミュニティに属する人々にとってのそれとは相容れない、ということだ。"Girls"のような曲が広まることによって、ヘテロセクシュアルな人びとにとっての他者であり、異なる性愛のかたちを持っているLGBTQ+の人びとに対する誤解もまた広まってしまうのではないか。その懸念には耳を傾けてしかるべきだろう。

 じっさい、"Girls"にも参加したCharli XCXの2017年のシングル"Boys"が、そのMVも含めて極めて巧みなmale-gazeの転倒としてフェミニズム的な批評性をみせてくれたのに対して、"Girls"にはそうした切れ味はあまり感じない。まだビデオが公開されていない状況でいうのもアンフェアだが、男性から女性に向けられたセクシュアルなまなざしを反転させたうえで、男性に付与されがちなマスキュリンな記号をも廃した、ある種「キュート」な男性たちのポートレイトを描いた"Boys"の持つ批評性と配慮を思うと、その対となるべき"Girls"はどうあるべきだったか、と考えてしまう。