ただの風邪。

音楽のことを中心にいろいろと書いています。

祝・英語字幕公開記念 春の陽気を待ちながら、HARD-OFF BEATS 2017春の陣を振り返る

www.youtube.com

 めでたいことに、2017年に音楽好きの話題を呼び、あの星野源までもがハマった局地的キラーコンテンツ、HARD-OFF BEATS 2017 春の陣・東京発着編に英語字幕がついたそう。何を隠そう、Ep.4-7の制作編の英訳をお手伝いしたのは不肖imdkmでございます。専門用語やプロデューサー特有の「わかってる」会話が飛び交うビデオを訳するのはやはり難しく、辞書と文法書(とGoogle)をくびっぴきにしたつたない英語力ではありますが、英語圏の方にもなにが起こっているか程度は理解いただけるのではないかと思います。

 さて、うわさでは小中学生のオーディエンスまで獲得しているというHARD-OFF BEATS。概要をおさらいしておくと、日本人にとってもっとも馴染み深いリサイクルショップのひとつ、HARD-OFFで購入したレコードのみを用いて、各プロデューサーが一曲ずつ仕上げるというシンプルかつキャッチーな企画。"The King of the Beats"や"Secondhand Sureshots"といったサンプリング・スポーツ企画にインスパイアされたtofubeatsが発起人となって、2011年に第一弾を、2017年にグレードアップした第二弾を制作した。経験と勘を頼りにdigったレコードに一喜一憂しながら楽曲を制作する過程は、サンプリングという手法の自由さを再確認させてくれる。

 The Fact Magの"Against the Clock"やMass Appealの"Rhythm Roulette"など、プロデューサーの制作現場に焦点を当てたコンテンツは根強い人気を誇っている。本企画もその仲間と言えるけれど、特異なのはバラエティとしての面白さ。いまだフォロワーを生みだし続ける往年の人気番組「水曜どうでしょう」を彷彿とさせるプロデューサーたちの珍道中も人気を呼んでいる。一方でtofubeats自ら手がける編集は完全にYouTuber以降のモダンスタイル。無駄を徹底的に省く偏執的なまでのエディットの畳み掛けが印象的だ。

 しかしなんといってもHARD-OFF BEATSの魅力は、ロードサイドの画一的な風景のなかから、いかにしてカルチャーを立ち上げていくかを教えてくれるところにある。tofubeatsはキャリアの初期からずっと、都市ではなく郊外にこそシンパシーを覚え、その風景を音を通じて描写し、歌ってきたミュージシャンだ。カルチャーをめぐる語りからはどうしてもこぼれ落ちてしまう非‐場所――ニュータウンの団地やショッピングモール――に光を当て、そこに芽吹くかもしれないカルチャーの未来を真剣に考えてやまない。彼はそういう人だ。

 HARD-OFF BEATSは、サンプリングという手法が切り開く無限の可能性のプレゼンテーションであり、そして同時にまた、「なにもない」場所から宝物を掘り起こし、「地方でカルチャーをやっていく」ためのハウ・トゥでもある。まだご覧になっていない方がいらしたら、この機会にぜひチェックしてほしい。↓

www.youtube.com