ただの風邪。

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ファイル共有サーヴィスのWeTransferがSoundCloud元従業員に資金提供の申し出

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 SoundCloud危機もひとまず様子見という段階に入ったところに面白いニュース。ファイル共有サーヴィスを提供するWeTransferが、この7月に解雇されたSoundCloudの従業員に向けて、1万ドル(約110万円)の資金提供を申し出た。SoundCloudは解雇した従業員の連絡先を、彼らの再就職を促す目的でGoogle Docsで共有しているそうだ。そこで入手した連絡先に、WeTransferのDamian Bradfieldからメッセージが届けられたという。Bradfieldによれば、この資金提供は「融資でも投資でもなく、贈与だ(not as a loan or an investment but a gift)」と言っていて、起業資金には程遠くても、ひとつのサーヴィスをかたちにするには十分な額ではないか、とのこと。

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 その詳しい経緯は上掲のBradfieldによるエントリに記されている。WeTransferはファイル共有サーヴィスであってクリエイティヴ・プラットフォームというわけではないのだけれど、その広告収入の30%を文化事業支援にあててきたそうだ。アートスクールでの奨学金、FKA Twigsのヴィデオへの援助、Kamasi Washingtonによるインスタレーションへの援助、ネットラジオ局の開設などなど、その活動は多岐にわたる。今回の資金提供の申し出は、その延長線上にある。

このいかれた考えのコアに隠されているのは、とても真剣なアイデアだ。私たちはイノベーションし続ける必要がある。誰でも――SoundCloudのスタッフたちも含めて――かつての従業員が大きなことに挑戦しようとするのを見届けたいと思っているんじゃないか。1万ドルでは完全に新しい会社を立ち上げるには不足だろうけれど、あるアイデア推し進めたり、なにかデザインしたり、デザインしてもらったりするには十分だ。iOSデベロッパーの友人をつかまえてMVP〔訳注:Minimum Viable Product、実用最小限のプロダクト〕を作ってもらうにも十分だ。私たちはそのプロダクトを紹介したり、スポットライトをあてることができるだろう。つまるところ、これってWeTransferが始まったきっかけと同じなんだ。

 SoundCloudから流出した人材を奪い合うのではなく、新しいイノベーションの種を撒こうというBradfieldの考えはとても興味深い。SoundCloudという企業に入ったからには、解雇された従業員にもそれぞれ自分なりの「音楽の未来」についてのアイデアがあったかもしれない。それをひとつでもかたちにできれば、大きな進歩が待っているのではないか? そうしたオプティミズムは個人的に大歓迎だ。なにより、この試みが文化事業支援と同じスピリットで行われている点が面白い。実際にこんなことで本当にイノベーティブで持続的な事業が生まれるかについては是非がわかれるところかもしれないけれど、パッと思いついたアイデアを即行動に移し、融資でも投資でもなくあえて「贈与」と言い切ってしまうBradfieldの無茶苦茶さは、あいかわらずほの暗い影を落とすSoundCloud危機にちょっとしたポジティヴさを差し込んでくれるように思う。