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世界各国は音楽にどれだけ投資しているのか? Pitchforkのリアルなレポート

Money

pitchfork.com

 ひと月ほど前のPitchforkの記事。世界各国の政府やNPOがどれだけ音楽に――とりわけポップ・ミュージックに――投資しているのかを追ったドキュメントで、チャートやメディアを賑わすアーティストたちがどれだけ国やNPOの助成に助けられてきたかを明らかにしながら、果たして「アーティストを公が支援する」方法に正解はあるのか、といった問題を提起している。読んでみるとあんな名前やこんな名前が「あの助成がなければここまでのキャリアはなかった」と述べているのに驚かされる。

 たとえば、北欧の助成金事情を解説するなかで、ハウスDJ・プロデューサーのLindstrømは、キャリア半ばでノルウェイ政府からのグラントを獲得し、プロモーションや盤のプレス費用の面でおおいに助かったと話している。

 また、いまやビルボードチャートを賑わすスターとなったThe Weekndがアルバムの正規リリース前にUSツアーをブックできた一因として、FACTORという官民共同の基金からの助成金を通じてプロモーション費用をまかなえたことが挙げられている(アーティストサイドはノーコメントを貫いているが)。ほかにもFACTORはCarly Rae JepsenやGrimesといったアーティストの初期のキャリアを築くのに重要な役割を担っていたそうだ。

 もちろん、やっぱ助成最高! という話ばかりではない。各国それぞれが抱える助成方針や成功の尺度――経済的成功か、文化新興か――には議論の余地があり、かなり詳しく個々の事例について、当事者の声を含めて取り上げられている。長い記事だけれど、読んでみると考えさせられる点がたくさん出てくる。さらに、上で挙げた北欧やカナダ以外にも、アイスランド、韓国、中国、スペイン、ポルトガル、フランス、イギリスなどなど、経済規模も洋の東西も違う様々な国の事例が紹介されているのが面白い(記事中に直接は出てこないけれど、政府による音楽に関する助成規模と各国の人口を比較したグラフには台湾もでてくる)。

 しかし、日本人としてはいささか寂しいことに、この記事のなかにはJapanのJの字も出てこない。あれだけクール・ジャパンだなんて言っている割に、こと音楽にかぎって言えば、「政府による文化支援」というトピックにはかすりもしないのが、海外から見た日本の現状なのだろう。

 まあ、日本としても縮小傾向にある音楽産業に食いつくうまみなどないのかもしれない。クール・ジャパン機構のウェブサイトによれば同機構への出資金は官民あわせて693億円というが、そこにはほとんど音楽関連の事業への支出は見られない(アジア広域でのライブホール展開事業に出資―日本の音楽産業の海外市場開拓を支援-くらいだろうか)。また、コンテンツのローカライズや輸出、海外拠点の設置といった文字は踊っても、コンテンツそのものを育てるという発想はさほどなさそうなのがお察しというところか。

 もともとこの話題、記事にしようしようとは思ってたんだけどタイミングを失っていたところ、TL上でクール・ジャパンに関するあれこれがふわっと話題になっており、ちょっと取り上げてみようと思いなおした。たとえばアジカン・ゴッチ氏の以下のツイートなど。

 このブログでは、先日も、アーティストが今後サヴァイヴしていくにはどうしたらいいか、というような話題を連続して取り上げた。

caughtacold.hatenablog.com

caughtacold.hatenablog.com

 以上の2つの記事は、アーティストがインディペンデントに活動していくための、インターネット以降のエコノミーという観点からまとめることができるだろう。それに加えて、マーケットでのサヴァイヴァル術だけではなく、公による支援がどうあるべきかもまた、重要な問題と言える。ぜひとも、冒頭で紹介したPitchforkの記事を斜め読みでもしていただければ、と思う。

Starboy

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