ただの風邪。

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Washed Outのヴィジュアル・アルバム《The Mister Mellow Show》は上半期ベストヴィデオ

 かつてチルウェイヴが台頭してきたころ、それを代表するアーティストとして存在感を放っていたのがWashed OutことErnest Greeneで、2009年リリースの“Feel It Around”はその一曲(と、収録EP《Life Of Leisure》)でチルウェイヴのなんたるか――ミニマルだが多幸感に満ちた反復的コード進行、ノスタルジーを喚起するリヴァーブに包まれたローファイでウォームな音像――を示したアンセムだった。

 とはいえ、そののちのWashed Outの道筋を僕は詳しく追っていたわけではない。Sub Popからリリースされた2枚のアルバムにも特に食指は動かなかったのだが…… なんと今年の春先、Washed OutがStones Throwから新作を発表するとのアナウンスがあった。その名も《Mister Mellow》。Washed OutがStones Throw??? という意外性とは裏腹に届けられた先行配信曲は

 レイドバックした雰囲気はそのままに、よりグルーヴィーで空間的な音づくりが印象的な一曲だ。これだけで《Mister Mellow》に大いに期待を寄せる根拠になった。コラージュ的に挿入される電子音やサックスの音色をはじめ、その音像はチルウェイヴ的な没入感というよりはどこか醒めた雰囲気を漂わせている。

 そして、アルバムのリリース直前、Stones Throwの公式YouTubeチャンネルから、《The Mister Mellow Show》なるヴィジュアル・アルバムがドロップされた。笑っていいんだか悪いんだかわからないオフビートなトークに導かれて、次から次へと展開するミュージック・ヴィデオたち。そのどれもが抜群に素晴らしいのだ。

 たとえば7分半あたりから始まる“Floating By…”はオスカー・フィッシンガー、レン・ライ、ノーマン・マクラレンといった実験映画・アニメーションを現代的なモーショングラフィックスにアップデートしたような、懐かしくも新鮮なてざわりを覚える。

 20分54秒あたりからの“Instant Calm”はクレイアニメというか、クレイのうえにシンプルな線で描かれるドローイング・アニメーションなのだが、描く場面の切り取り方や要素要素の動かし方がとても肉感的でセクシーだ。

 それ以外のヴィデオも軒並みクオリティは高く、《The Mister Mellow Show》は間違いなく上半期に公開されたミュージックにのなかでもトップを突き抜けて五億点だ。