ただの風邪。

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Cashmere Cat 《9》(2017)

 Cashmere Catはいまをきらめくダンスミュージックの新鋭で、個人的にはジャージークラブみたいな享楽的ダンス・ミュージックとかトラップみたいなベース・ミュージックの要素をとびきりポップに聴かせるプロデューサーという感じの認識だった。それで、この度いよいよ待望のアルバムがリリースとなって早速聴いてみたら案の定すごく良くて、なによりこんだけ豪華なゲストを招いておきながら曲がゲストに一切負けていない。Kehlaniだ~The Weekndだ~Ariana Grandeだ~というオールスター級の面子が揃ってこれ、というのはヤバい。一曲だけフィーチャリングのないインストのトラックがあるのだが(Tr.7 Victria’s Veil)、流れで聴いた時にまったく食い足りない感じがしない、どころか、なんならベスト・トラックかもしれない。あとインタヴューもヤバい。

 ブロンドの長髪をなびかせいかにもシャイな好青年然としたルックスもさることながら、タイトル曲に隠されたストーリーも「なんだもう! なんだ!」ともんどりうちたくなるようなところがある。お前はどこの主人公だよ。

 加えて雑感、インタヴュー中でも言及されているとおり、彼はダンスミュージックのプロデューサーでありつつもリズムの人というよりも音色の人であって、彼のつくりだすテクスチャーはかなり独特だ。素っ頓狂な音が鳴ったり、「ここまでやるのはありなのか?」というくらいやりすぎなエフェクトもさらっとやってのける。しかしリズムよりもハーモニー、グルーヴよりもテクスチャー、みたいな流れはどんどんアトモスフェリックになっていくトラップ以降のラップ・ミュージックとかアンビエントR&B、あるいはちょっと飛んでロウ・ハウスなんかに代表される大きな潮流みたいな感じがしていて、ダンスミュージックと言えばあたらしいリズムフィギュアの開拓(ないしは、ワールド・ミュージック2.0的な「侵略」)だったのが転換しつつあるのかな、と思う。このアルバムでもフィーチャーされているSophieなんかもその流れに属しているのでは、と思う。Sophieについては以前レビューを書いているけれど、まあその文脈でも読める内容になっているかも。