ただの風邪。

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野矢茂樹『入門!論理学』(中公新書)

入門!論理学 (中公新書)

入門!論理学 (中公新書)

 記号を使わない論理学の入門書ならば読みやすいかも、と読んでみたものの、たしかに見た感じはとっつきやすい。けれども、日常的な感覚に引きずられて、論理学独特の割り切った考え方に慣れるのにとても時間がかかった。後半の、命題論理の体系を一からつくってみる、という趣向も、日常が邪魔して素直に楽しめないところがあった。むしろ、無味乾燥な記号のほうが、「論理学」という分野の特殊さを理解する上ではかえって適切な舞台装置になったのでは? と思わざるをえない。実際、途中からは「かつ」とか「または」とか「ならば」といった言葉を見るたびに「これはあくまで『論理学』における「ならば」だぞ…」と自分に念じて読み進めていたので、実質的に日常的な言葉を記号に脳内変換していたわけだ。いま読み返しても、やっぱりこの脳内変換のプロセスがないと、ぱっと読むのは難しい。

 けれども、こうした違和感があってこそ、古典的な論理学がいかに日常的な感覚と乖離しているか、なぜ非古典論理学が必要とされるに至ったのか、ということが理解できた、とも言える。最終章に至ると、論理学特有の面白さと、そこからの広がりの大きさには魅力を感じるようになった。これ一冊で論理学をバリバリ使いこなせるようになりますよ、みたいな本ではないので、お手軽な入門書だと思うとがっかりかも。個人的にはどちらかというとがっかり寄りの感想だけれど、読んで損した、とは決して思わない。