ただの風邪。

音楽のことを中心にいろいろと書いています。

■カテゴリ別ショートカット

レビュー(音楽) レビュー(本) エッセイ、考えごと

瀬山士郎『読む数学』(角川ソフィア文庫)

 自分は完全にいわゆる文系で、数学にはさほど興味はなかったのだけれど、『「無限」に魅入られた天才数学者たち (〈数理を愉しむ〉シリーズ)』や、『零の発見―数学の生い立ち (岩波新書)』といった数学読み物にハマってしまい、ほかに手頃な読み物はないかと思って手にとってみた。

 『読む数学』と銘打ってあるものの、数式はけっこう出てくるのでちょっと面食らう。実を言うと、最初は、本格的に代数学の話題を扱うようになる第二章あたりで、一度ギブアップしてしまった。

 しかし、数式にひるまずに改めて地道に読み進めてみると、単位円を用いた三角関数の説明や、微積分の互換性についての説明など、高校時代に漫然と「よくわからないけれど、そういうものなんだろう」と思っていた概念が、ぱっとクリアに把握できたので驚いた。幾何学を扱う最終章では初歩のトポロジーまで紹介されているが、むしろこちらは図による説明もあるからか楽しく読むことができた。なにより、数という概念の成り立ちからはじまって、代数学解析学幾何学といった分野の初歩をかいつまんで理解できたのが嬉しかった。

 この本はおそらく、自分のようなからっきし数学が駄目だった人よりも、「公式を覚えて計算することはできたけれども、どこか腑に落ちないところがあった」といった理由で数学を敬遠し始めた人に向けて書かれているのだろう。なんとなく手が計算を覚えているような人(たとえば、受験数学の感覚が残っている大学生とか、実学として数学をよく使う社会人とか)はなんなく読み進められるはずだ。

 ただ、数式にアレルギーが出るような人だと、恐らく自分と同じようなところで挫折しそう。それでも、わからなければ前に戻りながら、根気強く読んでみることをおすすめしたい。大抵の場合、ひっかかっているのはごく些細な、テクニカルな問題だと思う。「あれ、この文字いつの間に出てきたんだっけ」とか「この記号ってどういう意味だっけ」という具合に、少し読み返したり、ネットなどで調べれば氷解するものばかりのはず。この本自体に過不足はないし、あくまで語り口は丁寧なので、焦らずに読めば前に進むことができる。

 丁寧な語り口と手頃なサイズでこれほどの内容が解説されている、という意味では星5つでもいいのだけれど、「ほんっとうに数学が駄目な人」にはちょっと根気が必要、という意味で、星は4つにしておく。