ただの風邪。

音楽のことを中心にいろいろと書いています。

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レビュー(音楽) レビュー(本) エッセイ、考えごと

エッセイ、考えごと

プロデューサーがサンプルパックをリリースする理由:「聴き手」ではなく「作り手」向けのビジネスあれこれ

ヒップホップを中心とする音楽業界では、表に立つラッパーやシンガーといったパフォーマー以上に、プロデューサー(=トラックメイカー)が重要なキーを握ることがしばしばある。しかし、彼らに必ずしも正当な評価が伴っているわけではない。たしかにアメリ…

「自分は政治の対象になっていない」とはどういうことか。

noahs-ark.click ぼくのりりっくのぼうよみ(以下、ぼくりり)のオウンドメディア、Noah’s Arkに掲載されたぼくりり×家入一真の対談を読んだ。評価経済の普及はどのような未来をもたらすか? についてはまあ諸説紛々あり、個人的にそこについて論じようとい…

若尾裕『サステナブル・ミュージック これからの持続可能な音楽のあり方』(アルテス・パブリッシング、2017)

サステナブル・ミュージック これからの持続可能な音楽のあり方作者: 若尾裕,桑原紗織出版社/メーカー: アルテスパブリッシング発売日: 2017/06/26メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る 今年の6月に公開された、元KORGの高橋達也氏へ…

SNS以降のインターネットで、音楽を通じた社会貢献は可能か?

Mountain Moves by Deerhoof アメリカのインディー・ロック・バンド、Deerhoofの新作が、正式な発売に先駆けてBandcamp上で発表された。《Mountain Moves》と題されたこの作品からは既にStereolabのレティシアが参加したトラックが先行公開されて話題を呼ん…

Behringer、Roland SH-01A発表の裏で自社のSH-101クローンをさりげなくリークする

www.synthtopia.com Rolandが808の日に合わせてTR-808、SH-101のBoutiqueラインでの復刻、さらにAIRAラインへSP-404が加わるという発表をして沸かせた裏で、Behringerが「待ってました」とばかりに自社製SH-101クローン、その名もMS-101の画像をリークしてい…

Diplo、Rihannaに曲を一蹴された思い出を語る(※本題はそこではない)

Charli XCXの“Boys”MVで犬と戯れるDiploの図 www.gq.com Coachellaに湧くアメリカを尻目にアフリカ・ツアーを行ったDiplo。彼に密着したルポ+インタヴュー記事が面白い。いまアフリカはたとえば南アフリカのハウス・ミュージック“Gqom”であったり、あるいは…

ファイル共有サーヴィスのWeTransferがSoundCloud元従業員に資金提供の申し出

pigeonsandplanes.com SoundCloud危機もひとまず様子見という段階に入ったところに面白いニュース。ファイル共有サーヴィスを提供するWeTransferが、この7月に解雇されたSoundCloudの従業員に向けて、1万ドル(約110万円)の資金提供を申し出た。SoundCloud…

世界各国は音楽にどれだけ投資しているのか? Pitchforkのリアルなレポート

pitchfork.com ひと月ほど前のPitchforkの記事。世界各国の政府やNPOがどれだけ音楽に――とりわけポップ・ミュージックに――投資しているのかを追ったドキュメントで、チャートやメディアを賑わすアーティストたちがどれだけ国やNPOの助成に助けられてきたかを…

「インターネットの王様は継続的なコンテンツだ」――密かに帝国を築くアーティストたちと、Jack Conteの起業家精神に学ぶ

記事後半で取り上げるPomplamoose。見目麗しいNataly Dawnと髭面のナイスガイJack Conteの二人組。 caughtacold.hatenablog.com 昨日のエントリ(上掲)に引き続いて、インターネットと音楽の込み入った関係について。昨日のエントリでは、SoundCloudの経営…

サンクラ危機と人気YouTubeチャンネルから見る、インターネットと音楽の複雑で明暗入り交じる現状と未来

沈みゆくSoundCloud、この秋が正念場 SoundCloudがいよいよヤバいと目下の話題だ。 jp.techcrunch.com 一年前にも身売りの噂が立ち、経営に暗雲が立ち込めていたSoundcloud。いったんは明るい兆しが見えてきていたような気がしていたのだけれど、ふと調べて…

「音楽が好き」とはどういうことか。心震わす4つの「音楽文.com」入賞作

ロッキンオンが主催する「音楽文.com」に掲載されている作品から、とりわけ胸に響いた入賞作4本をピックアップ。ちょっとナメてたけどマジでヤバいサイトだ、これは。 音楽文.comってなんだ 革命への第一歩。UVERworld KING’S PARADE 2017 ――女から見た男祭…

ポップ・ミュージックの持続と反復――The McGill Billboard Projectのデータで遊んでみた

caughtacold.hatenablog.com 先日こんな記事を書いて、データで遊ぶのは楽しいかも、とおもっていたところ、同記事でも取り上げている論文経由で“The McGill Billboard Project”というのを知った。1958年から1991年のビルボードチャートからランダムにサンプ…

「知性」と「道具」のあわいに――2つの「クリエイティヴなAI」プロジェクトについて

pitchfork.com Pitchforkが先日こんな記事を載せていた。曰く、「アンドロイドはエレキギターの夢を見るか? 音楽AIの未来を探る」。このタイトルを見て、ひとは似たような洒落を思いついてしまうものだな、と驚きつつ苦笑してしまった。昨年に僕が書いた音…

デジタル配信はポップ・ミュージックの構造を変えたかって? …まあ、ある程度はそうだろうね。

(6月16日若干改稿) wired.jp ひとは自分がいままさに経験している変化というものを過大に評価する傾向があるように思う。この記事を書いた人もそうしたバイアスにかかっているのではないかと思う。いわく、 インターネットとデジタルテクノロジーは、音楽…

機械化された喉のヴィルトゥオーゾ:サイボーグ化するラッパーに関する試論(2)

(1)はこちら caughtacold.hatenablog.com オートチューンのテクスチャ:Futureにおけるオートチューンの使用から オートチューンの効果のひとつに、独特のテクスチャが声に与えられるという点が挙げられる。急激な音程の昇降をともなう節回しや、あるいは…

機械化された喉のヴィルトゥオーゾ:サイボーグ化するラッパーに関する試論(1)

あの新譜のオートチューンに意味はないのか? あの新譜 auto-tune 意味なくかかっていた tofubeats - SHOPPINGMALLより 今ヒットチャートに登っているヒップホップ/R&Bのトラックにはほとんと必ずオートチューンのかかった歌声がフィーチャーされている。Ch…

オルタナティヴなポップ・ソング:SOPHIE “PRODUCT”(2015)について

調性の崩壊と演奏者の解放 おおよそ18世紀に確立した古典調性と呼ばれる音楽のフレームワークは、20世紀初頭にその構造的極限に達した後に崩壊を迎え、十二音音楽やミュジク・コンクレート、不確定性の音楽といった諸実践へと開かれていった。調性とはいわば…

レトリックと含蓄

Twitterを眺めていると、こんなツイートが流れてきた。botからだ。 優しさと、強さは、セットです。— ATSUSHI(from EXILE) (@EXILE_SAtsushi) 2017年3月10日 言うまでもないが、陳腐だ。botだからもともとどういう文脈でどのようにしてこの言葉が生まれたのか知る…

ロックンロールとトーン・クラスター(ヴェルヴェッツに関する覚書)

Velvet Underground & Nico-45th Anniversary いまさら言うことでもないだろうが、Velvet Underground(以下、ヴェルヴェッツ)の音楽性は混乱していると思う。一方にはダウナーで退廃的な1stがあり、もう一方には作りかけの甘ったるい珠玉のポップスが散り…

そのミュージックビデオ、誰に届けるつもりなの?

今朝目を覚ますと、くるりの岸田氏がこんなツイートをしていた。 海外の人にも観せたいから、英語のリリックビデオ作ろう、てな感じで作っていただいたのに、海外でロック掛かってて観られへんてどういう失態ですか。スタッフはチェックもしないのか…。じゃ…

ヴェイパーウェイヴのアイロニー、その裂け目――猫 シ Corp《NEWS AT 11》(2016)からひもとく

ヴェイパーウェイヴが2017年現在いまだ死なず、むしろ根強い人気を誇っているという事実は、実のところなかなか信じがたいところがある。メディアがつくりあげるハイプを露悪的にパロディ化した、よくあるインターネット・ミームだと思っていたのに。僕はけ…

「誰でもミュージシャンになれる」

身体のジェスチャを通じて音楽を演奏できる、KAGURAというシステムが発売になるらしい。自分は使ってみたいとは思わないにせよ、おもしろい試みではある。使い方次第ではステージ上のパフォーマンスがよりいっそう派手になるだろうし、こうやってパッケージ…

「ことばが通じない」人はいる、けれど

togetter.com この一連のツイートがとにかく不快でたまらなかった。ずっともやもやとしていたら、増田にちょうど思っていたようなことを書いている人がいた。 anond.hatelabo.jp もっと言えば、「自分の意図したように自分の発言が伝わらなかったこと」を、…

“MP3は人間をネガティヴな感情にする”のか、あるいは炭酸飲料は歯を溶かすのか

fnmnl.tv ひどい記事を見た。 MP3圧縮は中立の、もしくはネガティブな特質の感情を強め、逆にポジティブな感情を弱めることがAudio Engineering Libraryによって行われた新しい研究でわかった。 ハイレゾ音源はただ単に綺麗に聞こえる音ではなく、人間の感情…

有名ウェブマガジンにどうでもいいつっこみをする、あるいは雑な翻訳記事への憤り

gigazine.net GIGAZINEみたいなウェブマガジンはこういうネタを知るのにたしかに重宝するんだけれど、地味な誤訳が目についてしまう。だいたいの場合、全体のニュアンスから言えばまあ意訳のひとつとしてまったく間違いとは言い切れないけれども、単語の羅列…

デジタルオーディオとその幽霊たちについて――アルヴァン・ルチエからYouTubeまで

私はいま、あなたのいる部屋とは違う部屋のなかに座っています。私は自分の喋っている声の音を録音していて、これからその録音をこの部屋で何度も再生します。[その過程では]この部屋の共振周波数が強調され、私の発声のどのような面影も、もしかしたらリ…

AIはプリペアド・ピアノの夢を見るか?――人工知能と自動作曲に関する覚書

この曲は、ソニーの研究所が開発したAI、「FlowMachines」を用いて作曲された、「ビートルズ風」のポップソングだ。イントロのコーラスワークやベルの音色はむしろペット・サウンズ期のビーチ・ボーイズではないのか、という気もするけれど、たしかにメロデ…

『最近のポップスはサビでいかに何もしないかですよね』(©狭間美帆)、あるいはEDMに侵食されるポップスについて

標題にかかげた発言は、菊地成孔の運営するブロマガ『ビュロー菊地チャンネル』や、あるいは先日(10月28日)のTBSラジオ『粋な夜電波』で菊地がジャズ・ミュージシャンの狭間美帆による言葉として紹介したものだ。狭間本人もゲストとして登場したその回の『…

チャック・ベリーってなにが凄いんかな、と考えた話

ロックンロールで一番誰が好きか、と言われたら、わりと迷わずチャック・ベリー、と答える。もともとロックンロールなんてチャック・ベリーくらいしかまともに知らない、ということもあるけれど、第一には、彼の音楽も詞もものすごい鋭さを持っているからだ…

「萌え絵」は「男性の眼差し」の具現化なのか?――「駅乃みちか」問題について

東京メトロのキャラクターである駅乃みちかは、2.5頭身程度に極端にデフォルメされたゆるキャラ的な意匠で、独特な(若干うざい)キャラクターで一部から大きな支持を得ていた。しかし、そのキャラクターをいわゆる「萌え絵」にアレンジした画像が出回ると、…