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ただの風邪。

音楽のことを中心にいろいろと書いています。

ニュージーランドの宅録ユニット、Fazerdazeが良い

 ユニットっつーかひとり(Amelia Murray)なんだけどね。もう端的に、こういうのに弱い。いっときのLa Seraなんかもそうだが、エモーショナルすぎない歌声が良い。インディー女子っていうだけで点数甘くなってしまいそうになるけれど、シンプルなアレンジながら音のひとつひとつがしっかり厚みがあって、雰囲気がつくりこまれているのが印象的。セルフプロデュースだってさ。

MC-505のLEDスイッチを修理する

 かれこれ半年ほど愛用しているMC-505だが、20個ほどついているLEDスイッチがどれもいまいち反応が鈍く、チャタリングがひどく起こることも多々あるのでメンテすることにした。最初は適当なスイッチに交換しようと思って一応だいたい同じ仕様のスイッチを購入(送料だけで4000円以上した…)のだが、サイズが微妙に合わなかったため使用は中止。分解清掃でいけるだけいこうということに。

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 裏蓋をあけーの

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 乳白色の半透明キャップがついてるのがLEDスイッチ。これを全部はんだ吸い取り機や吸い取り線を使って取り外す。

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 こんな感じ。見てわかるかどうか、全体としてはスイッチ部とヘッド、そしてLED部に分かれている。

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 これをひとつずつ無水エタノールと綿棒で洗浄。特にスイッチ部(黒い脚付きの箱)の内壁と白いヘッドの側面をよーく洗う。すると、取り外す前は「ぬるぺこ…」って感じの押し心地だったのが、「かちかちっ」って感じに復活した。

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 ほいで組み立てーので終了。起動したらバッチリ動作。よかったよかった。

WIRED JAPANがプレイリスト「世界は哲学者を求めている」を公開中

 WIRED JAPANは今度哲学の講座を開くらしいが、どんなもんなんだろうか。講師は岡本裕一郎。フランス現代思想に関する新書にはお世話になった(デリダとかドゥルーズを歴史化して「教養」とするのに良い一冊ではないか)。まあ僕にはまったく関係のない話なんだけど。そんなWIRED JAPANがApple Musicにプレイリストを公開中だった。題して「世界は哲学者を求めている」。哲学者にちなんだ楽曲がずらりと並んでいる。ベルセバの“Marx and Engels”やスクリッティ・ポリッティの“Jacques Derrida”など、思わずくすっと笑ってしまうセレクトだ。その名も“The Critique of Pure Reason(純粋理性批判)”なんて曲もある。ポップスからジャズ、エレクトロニカまで、わりとおされ~な選曲になっているので、おやこんな曲が。なんて思いながら聴くと楽しいかも。

Nico Segal(fka Donnie Trumpet)の新バンドThe JuJuのリリース、《Exchange》が良い

pitchfork.com

 The Social Experimentと組んだ前作Surfが大好評だったDonnie Trumpetがトランプ当選後に名義を変えてからのリリース一作目(で、いいのかな?)。基本的にはインストのジャズアンサンブルで、Segalらしい親しみやすさのあるアレンジに加えて界隈ではお馴染みのJamila Woodsのヴォーカルが彩りを添えている。Woodsの声色ってものすごい包容力があるのにエモーショナルになりすぎないところがあって、人懐こいサウンドのなかにクールさを注ぎ込んでいると思う。さらに言えば、4曲目のThe Laneやそれに続くGlideあたりにはグライムや初期ダブステップっぽいビート感があって、それが不思議。前者は楽器とすっかり馴染みつつも存在感を隠しきらないWoodsの歌声がやはり効いている。

ここ1年ほどのブログ記事を振り返ってみる(akaもっと読んで欲しい記事一覧)

 さて、気づくとこのブログを本格的に始動して1年以上が経とうとしている。すこし厄介な病に倒れて療養中の身ながら、いろいろと力を入れて書いた記事が結構ある。ちょっとここらで振り返ってみてもいいかな、と思う。

caughtacold.hatenablog.com

 チャック・ベリーのあの印象的なイントロについてポリリズミックに解釈してみた小文。たしか大瀧詠一だったかが「アメリカ音楽はどこかの段階でシャッフルっていうのを捨てたんだよね」みたいなことを新春放談で言っていたような気がするのだが、その断裂線はやはりチャック・ベリーにあるように思えてならず、書いた次第だったと思う。チャック・ベリーの訃報もあって、最近もちょくちょく読まれている記事みたい。

caughtacold.hatenablog.com

 狭間美帆の発言から、EDMに侵食される北米のポップ・ミュージックについて考察したもの。しかし、この記事でも既に触れているが、今やモードはすっかり変わって「ドロップ」主体のポップスっていうのも落ち着いてきた気がする。むしろトラップの重たいビートでみんなテンション下がってるみたいな。トロピカルもどっちかっていうとチルめのノリだったし。

caughtacold.hatenablog.com

 これはずーっと温めていた発想の記事で、AIと人間の共作というものが進展していくと、音楽の記号化の極北であるMIDI(これを菊地・大谷テーゼと呼んでもいいかもしれない)を越えて符号化のレベルに達しちゃうのでは。という話。しかしまじでDeepMindが吐き出したピアノの「演奏」には鳥肌が立ったものです。

caughtacold.hatenablog.com

 これも結構構想が長かった記事で、Twitter上では反応もそこそこあった。音声や動画の圧縮アルゴリズムというものが圧縮対象の「本質」だと見なす情報とはどのようなものか、アルゴリズムの向こう側の世界ってどんな世界なんだ、みたいなことを、ロー・ビットレートの音声ファイルや動画ファイルに見出してみる、という話。ちょうどそのいい例になったのが、アルヴァン・ルチエの《I am sitting in a room》とそのオマージュ作品だった。

caughtacold.hatenablog.com

 30年近く生きてきて、だいたいその三分の二くらいは自覚的に音楽好きだった自分にとって、音楽の可能性とはなんだったのかしら。音楽の楽しみとは。ということを考えてしまった記事。大学院時代に研究していたフルクサスの美学に惹かれたのもこの記事で書いていることが根本にあると思う。

caughtacold.hatenablog.com

 ひとつ上の記事を読んでも分かる通り、あんまり音楽産業にコミットしたいとも思わないし言及もそんなにしたくないと思ってしまう程度にはナイーヴな人間だけれど、さすがにこれはまずいんじゃないの、と思っていることのひとつが、「ショートバージョン」という謎の習慣。スカパーの音楽チャンネルを四六時中エアチェックしてミュージックビデオを熱心にチェックしていた頃もあったほどこの表現媒体には思い入れがあるので、それがようわからんビジネスの都合でおざなりに扱われているのが悲しくなるのだ。

caughtacold.hatenablog.com

 これはチャック・ベリーの話を書いてたときからぼんやりと思ってたことで、短くても記事にできてよかった。ヴェルヴェッツのラディカルさはどこにあるのか、という話なんだけど、時代のズレるジャーマンプログレとあえて比較してみた意味は実はわからない。ただ、現代音楽とロックの接点を考える上ではある程度有益な比較では、と……。

caughtacold.hatenablog.com

 ディスク・レビューのかたちをとってるけど、「ポップスの想像的分業制」とかいう謎概念を提示してみたくて書いたところがある。エレクトロニック・ミュージックの潮流として、リズム、和声、メロディみたいな分業が融解しつつなおポップ、みたいなのがOPNなんかの凄いところやんな、みたいなことを思っていて、それがSophieの曲にも繋がるなと思ってディスク・レビューというテイをとってみた。

caughtacold.hatenablog.com

 なんでラッパーはサイボーグ化するのか? というDJ /Ruptureの文章から引き出した問いを煮詰めてみたらこうなりました、みたいな話。最初はカニエ・ウェストを分析しようとしていたんだけど、Drake & Futureを聞いたらこっちのほうがおもろいやんけ、みたいになってこうなりました。佐藤雄一さんのKOHH論にもちょっと影響されている。

 まあ、関心がむく未読の記事があればぜひ読んでみてください。できればスターやブクマも欲しい。笑 Twitterでは知らん人にもファボられるのにスターもブクマもつかないんだよな。なんでだろうな。

Vaporwaveは誰のものか、と思ってしまった――Grafton Tanner, "Babbling Corpse: Vaporwave And The Commodification Of Ghosts," Zero Books, 2016.

Babbling Corpse: Vaporwave And The Commodification Of Ghosts

Babbling Corpse: Vaporwave And The Commodification Of Ghosts

 おそらくはVaporwaveを主題に書かれた数少ない本の一冊*1で、Kindleを通じても販売しており入手しやすい。内容はポスト9.11以降という視座からのポップカルチャー分析にVaporwaveという題材を取り上げている感じで、思弁的実在論とかOOO(Object-Oriented Ontology、オブジェクト指向存在論)について言及していたり、その流れでホラーの哲学についても紙幅を割いて(なんならVaporwaveをその文脈から)論じて見せている。

 話自体はまあまあ面白く、「ポストモダンの文化は政治的か否か」という問いをフレドリック・ジェイムソンパスティーシュの理論とリンダ・ハッチオンのパロディの理論の対比から立てて、いやパスティーシュとかパロディとかじゃなくてホーンテッド(Haunted)なアートというのがポスト9.11の世界で最もクリティカルなんだよね、とデリダの幽霊(亡霊、といったほうがいいのか?)論をひきあいに出して論じている第三章のあたりなど、ちょっと読ませるところがある。しかし、《キャビン》(2012年)とかAdult Swimの《Too Many Cooks》(2014年)といったメタ・ホラーなブラック・コメディとVaporwaveを「インターネット以後の世界っぽい」という話で同じようなくくりに入れるのはちょっとよくわからない。時間のたがが外れてしまったようなVaporwaveのある種の不気味さを《シャイニング》のジャック・ニコルソンの存在感と重ね合わせていたあたりとかはまだ納得できたけど。*2

キャビン スペシャル・プライス [Blu-ray]

キャビン スペシャル・プライス [Blu-ray]

 まあ、そういった最近流行りの思想の潮流にVaporwaveが乗ってますよという話以上に、音楽自体にせよ音楽ジャーナリズムにせよ、インターネットによって過去の商品化、コモディティ化という現象に呑み込まれてしまっている、というのが著者のもっとも大きな問題意識だ。それに対する抵抗としてVaporwaveがある、という大筋の結論自体は月並みではあれまあ妥当ではあると思う。それはVaporwaveの徹底的な非作家主義DIY精神によくあらわれている。しかしVaporwaveが他方で過去の商品化に本当に抵抗できているか、そういう政治性ばかりに着目したら見落としてしまうものがあるんでないか、という気もする。それは以前に猫シCorpのレヴューでも書いたことなのだが、Vaporwaveのカセットテープ・シーンの隆盛を見てもかなりきわどいところがある。もちろんBandcamp上を通じた少部数のカセットテープによる流通をDIY精神のひとつのあらわれとして見ることもできるが、他方でカセットテープ自体が過去の商品化という大きな潮流のひとつのあらわれであるわけで、そのあたりの倒錯まで含めないとVaporwaveの面白さは薄れてしまうのではないか。

disposable-id.hatenablog.com

 加えて言うと、ポスト9.11のカルチャーというVaporwaveの前提自体をちょっと疑うべきというか、それはあくまでアメリカを中心とした受容なんだということをどこかで相対化しておかないといけない。もちろんVaporwaveが欧米を中心とした文化圏で生まれ、受容されていることは認めざるを得ないのだが、たとえば猫シCorpだってオランダ人なわけで…… とりわけ日本のシティ・ポップに対する偏愛を隠さないFuture Funkシーンであるとか、《ブレードランナー》的なサイバーパンク風味のアジア趣味であるとか、もっとVaporwaveのコンテクストは重層的だと思うのよね。アメリカ人がアメリカ人の問題意識でアメリカ産のVaporwaveを聴くとこういう解釈になる、という話だ、ということは割と声を大にして言っておきたい。

*1:Google Booksによるともう一冊類例があり、Ekko Irukaという人物が“Vaporwave: A Dystopian Musical Codex”という本を2015年に出しているが未読。読む気も特にないが…

*2:これは英文を適当に読んでるせいかな…… あと読後の今にして思えばショッピングモール+ホラーでゾンビの話題にならなかったのは不思議。当たり前すぎて避けたのかな。

Ross from Friendsのライヴがちょー良い

 Ross From Friendsのライヴ、キーボード/Ableton/ギターの三人構成かっこいいなーと思ったら途中でキーボードがサックスを手にして吹きまくり。かなりいい。ロウなサンプル主体のサウンドだと思っていただけにこのライヴは意外。じっくり聴いてしまった。