ただの風邪。

音楽のことを中心にいろいろと書いています。

Modeselektor、YUKIKA、米津玄師、あいみょん

 Modeselektorの新譜。8曲で34分とダンスアルバムにしてはちょいタイトめかな、という印象。DAZEDのDAZED MIXに登場してインタビューにも答えていたのだが、それがまた興味深く、本作はドイツの政治状況がインスピレーションになっているらしい。極右の台頭や、クラブシーンでのホモフォビアやセクシズム。これってかつてクラブカルチャーに見出したユートピアと違くない? みたいな。「僕らはほんとうに目を覚ましたんだ、ただ大変な目覚めだったけどね (We really woke up, but we woke up the hard way.)」という言葉が印象的。サウンドは、割と最近のテクノ系アクトがラフでミニマルなサウンドに回帰しているのと同調しつつ、よりビートはハードに、コード進行的な意味でのカタルシスが強い曲も。なにより、M1「One United Power」という曲名がこのアルバムが背後に隠している政治性をあらわしているように思う。「Unite」だけならセカンド・サマー・オブ・ラブやレイヴカルチャーみたいなカウンターカルチャーの精神を単に反復するだけかもしれないが、そこに明確に「Power」、力が宿っているのだ。なるほど感慨深い。ちなみにコード進行のカタルシスが云々言うてるのはこの曲を指してます。

 へーシティポップやってる日本人ぽい名前のアイドルね、と思ったら寺本來可さんだった回。シティポップ風のサウンドだがスタイリングは80年代後半の日本のアイドルのようで、しかし振り付けはKポっぽいキビキビしたもの、という地味なごった煮感にくらくらする。日本人が海外で自らの文化的なオーセンティシティを打ち出した楽曲を歌おう、というときに、シティポップがまた新たな選択肢に入ったということか。「SUKIYAKI」は遠くなりにけり。もちろんこれは韓国がこの時代の日本のポップ受容について歴史を持っていることや、折からの「プラスチック・ラブ」現象も重なっているわけだが……。シティポップ、ローファイヒップホップ(Nujabes)、それらに漂うノスタルジア。YUKIKAの出す成果如何では、今後こういう企画が立ち上がったときにシティポップ風の楽曲が採用されるケースが増えるかもしれない。そこで、2010年代のネオシティポップとでも言うべき新しいバンドたちをどう文脈付けてプレゼンできるか、という話にもなってくるような。

diorama

diorama

 車でちょっと出かける予定があったので道中米津玄師の『diorama』を聴いていたのだが、なるほどこれは面白いな……としみじみ思った。的確に因数分解できるようなことはあんまり知らないけどクセの強いメロディセンスに惹かれる。音域はさほど広くないが細かく上下するメロディが、コードに微妙にぶつかるように進んでいくので、うねうねとどこまでも終止しないみたいな変な印象が起こる。アレンジもバンドアンサンブル的だが無国籍な感じ。ギターリフにエモ~マスロック~ポストロック的なニュアンスを感じて、これはRAD WIMPSなんかもそうだよな。ポストロック的なコード感やリフづくりがこういうふうに昇華されんだ、というのは興味深い。これを聴いた後にいきなり『BOOTLEG』を聴くと、発声ががらっと変わってメロディの跳躍も大きくなるのがまた面白い。まえ神野さんが言ってたけれど、歌がうまくなって出せる音域とかが変わってくると作る曲も変わる、ってのがはっきりわかりますね。

 追記 神野さんとは関西ソーカル主催の神野さんである

BOOTLEG

BOOTLEG

Cut 2019年 03 月号 [雑誌]

Cut 2019年 03 月号 [雑誌]

 「CUT」3月号のあいみょんグラビアがマジでヤバい。これは道を外す人が出てもおかしくない。ヤバい。インタビューの内容もヤバい。あいみょん、いろんな意味で2010年代末のモードを体現しすぎている。J-POPのシミュラークル化(どこかで聴いたことあるがどこでも聴いたことはない)、「生活」へのフォーカス。星野源が「あえて」の戦略としてポストモダン的な身振りでやってることをド天然で(あるいは少なくともそのように見えるように)やってる感。もちろんそこには周囲のスタッフの助力やagehasprings田中ユウスケ氏のサウンド面でのディレクションの妙もあるんだとは思うが。おれは完全にあいみょんにやられてしまいました。

 なんか米津玄師を聴いて感心しながらあいみょんのグラビアにやられてたら、「もしかして自分はJAPANの読者なのでは?」という錯覚に襲われた。ほとんど読んだことないんだけど。

Shurkn Pap、Petit Biscuit、San Holo、pxzvc、Seiho、「わたしたちのくらしについて」

 怒涛の新譜ラッシュ。豊作じゃ~い 豊作じゃ~い 聴ききれてないっす。

 徹底的にレイドバックしたメロディアスでチルなサウンドに低めの声質にオートチューンが心地よいShurkn Pap、文句なしのEP…… プロダクションがFuture BassとかFuture Soulっぽい洒落たエッセンスもあってよい。売れろ~!

 Petit Biscuitけっこう好きでチェックしてたんですが新曲も良い。ノイジーなベースやパーカッションの暴力性と、それが微妙にスケールインして響いていくすれすれなメロディアスさが素晴らしい。洒落っ気の皆無なヴォーカルもかえっていまの空気にフィットしている。

 下手したら大味なSSWっぽい楽曲になりそうなところを、ベースミュージックやEDMを通過した巧みなアレンジでむちゃくちゃ壮大な別世界へと連れてってくれる凄まじい曲。San Holoさすが。ベタに感動してしまった。こういうの当たり前になってくんだろうなあ。

 Tokyo Recordingsからインドネシアのビートメーカーpxzvcの新曲。音色による場面変化が素晴らしく、2分半程度の短い楽曲ながら見えてくる景色がすごく豊か。来月出るらしいEPもめちゃ楽しみ。

 Seihoの新曲、これもすばらし。アイロニカルな曲名にエモーショナルなリフ、ヴォーカルチョップ。アシッドなラインも途切れ途切れでグルーヴィー。心地よいリズムの反復にフィルターやレゾナンスのモジュレーションでストーリーをつくっていく良質な四つ打ちを久しぶりに聴いた……とちょっと感動した。

 「わたしたちのくらしについて」というプレイリストをつくったよ。インターネット感とくらし感の交差する2019年のいまにフィットする曲を、最近のリリースを中心に集めました。とか言いながら嫁入りランドのちょい前の曲とかtofubeatsの昔の曲入れてますが。

Billie Eilishとサブベース、「人工知能と音楽連載」完結、入江陽、高橋芳朗

realsound.jp

 書きまし太郎。最近のポップスはマジで低域が太い(特に北米)、なかでもBillie Eilishのサブベースは一風変わっている、そしてそのルーツはJames Blakeでは? みたいな話です。ぜひご一読を。ちなみにこの「ポップスの低域」について、いろいろ考えたんすけど、やっぱいちばんエクストリームなのってアメリカで、たとえばイギリスのポップアクト、Zaynなんかはそこまでぶりぶりじゃないんすよね。もちろんUKドリルとかダブステップとかああいうのは別っすよ。K-POPも最近のモードは一時期みたいな「ドEDM~Future Bassでぶりぶり低音出しまっせ」みたいなのではなく、たとえばGWSNとかはディープハウス的な端正な四つ打ちをやっても意外と低域はそこまでだったりして。下の方すかすかでしょ。終盤に一瞬入ってくるトラップのパートや、フィルイン的に使われるスウィープ音が結構下まで出てるかなと言う感じ。

 まあボーイバンド系でダンスサウンドを押し出していると結構ハードだったりもするけど。そもそもEDM直球のアプローチがわりと下火になっている印象。いまはむしろステレオイメージの扱い方や、「無音」に対するアプローチが気になっている。

natalie.mu

 書きまし太郎(その2)。人工知能と作曲をめぐるエッセーもこれが最終回です。ジョン・ケージの話から始まって、ミューザックやエレベーターミュージック的な文脈からローファイヒップホップに至り、果たしてAI作曲家が活躍する場とは? みたいなことを書いています。1曲の「作品」とはなんぞや、その「作品」を「聴く」とはどういうことか、というのが1番書きたかったところであり、2019年はこの連載を載せてもらえたというだけでかなりいいスタート切れてるなと思いマス……m( )m ちなみに前編・中編は以下の通り。

natalie.mu

natalie.mu

 遅ればせながら聴きました入江陽さんの新曲。「はとバス」に続いてマジでヤバい、いま最もアルバムが望まれているのではなかろうか。プロデュースワークも多いしキーパーソンすぎるな~

生活が踊る歌

生活が踊る歌

 いやこれ…… 完全に待ち望まれていた奴でしょ。高橋芳朗さんの洋楽コラムまとめ本。日本国外の音楽事情をバランスよく、かつ絶妙なタイミング&切り口でキュレーションして紹介する手際の良さには毎度感動してしまう。資料的価値も絶対あるよなと思っていたから本になるのはうれしいな~。